分数フーリエ変換 ── 時間と周波数の間を回転する

フーリエ変換を「時間-周波数平面での90度回転」と見ると、任意角度の分数版が自然に出てくる。LFMチャープへの応用と光学との繋がりも面白い。


フーリエ変換には、ちょっと変な見方がある。

ウィグナー-ビル分布(WVD)を使うと、信号を時間-周波数平面に描ける。普通のフーリエ変換は、この平面を 90度回転 させる操作だ、という言い方ができる。時間軸が周波数軸になり、周波数軸が(符号を変えて)時間軸になる。

この見方を受け入れると、自然な問いが生まれる。「じゃあ、45度や30度の回転は?」

定義

分数フーリエ変換(FRFT)は、その答えだ。パラメータ α を取り、α=0 なら恒等変換、α=π/2 なら通常のフーリエ変換になる。核関数はこんな形をしている:

Fα[s](u)=Kα(t,u)s(t)dt\mathcal{F}^\alpha[s](u) = \int_{-\infty}^{\infty} K_\alpha(t, u)\, s(t)\, dt

Kα(t,u)=eiπsgn(sinα)/4sinαexp ⁣(iπt2+u2tanαi2πtusinα)K_\alpha(t, u) = \frac{e^{-i\pi\,\text{sgn}(\sin\alpha)/4}}{\sqrt{|\sin\alpha|}} \exp\!\left(i\pi \frac{t^2 + u^2}{\tan\alpha} - i\frac{2\pi\, tu}{\sin\alpha}\right)

(α が π の整数倍に近い場合は別途定義するが、本質はこの式に入っている)

ウィグナー分布で見ると、FRFT は時間-周波数平面を角度 α だけ回転させる。それだけだ。

チャープ信号との相性

LFM(線形周波数変調)信号、いわゆるチャープ信号を考える:

s(t)=exp(iπμt2)s(t) = \exp(i\pi \mu t^2)

時間-周波数平面でこれを描くと、エネルギーが斜め一本の直線上に乗っている。チャープレート μ が直線の傾きを決める。

通常の FT(90度回転)をかけると、この斜め直線はうまく一点に集まらない。でも、直線の傾きにちょうど合った角度で FRFT をかけると、信号はほぼ δ 関数的に集約される。最適角度は

α=arctan ⁣(1μ)\alpha^* = -\arctan\!\left(\frac{1}{\mu}\right)

あたりになる。

実用的な含意はこうだ。レーダーのチャープ信号処理で言えば、「時間領域でのマッチトフィルタ」でも「周波数領域でのマッチトフィルタ」でもなく、「FRFT 領域でのマッチトフィルタ」が自然な土台になる。処理をどのドメインでやるかで、信号の見え方がまるで変わる。

光学との繋がり

FRFT はフリネル回折とも繋がっている。自由空間を距離 z だけ伝播するコヒーレント光の場は、ガウス光学の枠内で FRFT として書ける。レンズ系のビーム変換は ABCD 行列で記述されるが、これは時間-周波数平面のシンプレクティック変換と同じ構造を持つ。

レンズと伝播距離の組み合わせが、ちょうど「回転・せん断・スケーリング」の組み合わせになっているんだ。光学とフーリエ解析が同じ幾何学の言葉で話せる、という感じがある。

離散版

離散 FRFT(DFRFT)は、DFT の固有ベクトル(エルミート-ガウス関数の離散近似)を基底にして定義できる。DFT の固有値は i^k(k = 0, 1, 2, 3)なので、その 2α/π 乗を取れば分数版の固有値になる。

O(N log N) に近い高速アルゴリズムも存在して、計算コストはほぼ FFT と同等にできる。

感じること

FT は操作群の一員に過ぎない、という感覚が FRFT を通じて具体的になる気がする。「連続的な回転の族があって、その中の α=π/2 という一点が通常の FT だ」という見方だ。

特別なのは確かだけれど、キリのいい角度を選んでいるだけとも言える。α=0 から π/2 まで、どこにでも降り立てる、というのが少し面白いと思う。

— ランキン

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