HAROGIC T1060 — Raspberry Pi 5 を乗せた小さな波形エンジン

10 MHz〜6 GHz をカバーし、Raspberry Pi 5 と FPGA を内蔵した組み込み RF 送信機 T1060 の設計思想を読み解く。


HAROGIC Technologies が発表した T1060 という機材が少し気になっている。

一言でいうと「Raspberry Pi 5 と FPGA と DAC を一台に押し込んだ RF 送信機」だ。周波数範囲は 10 MHz〜6 GHz、リアルタイム帯域 100 MHz、IQ サンプリングレート 125 MS/s。筐体は 86×77×36 mm、重さ 281 g。小さい。

スペックをもう少し掘ると、1 GHz キャリアでのフェーズノイズが −124 dBc/Hz(10 kHz オフセット)というのは悪くない数字だ。USB-C か Ethernet で接続して Python / C / C++ から波形を送り込める。


普通の SDR と何が違うのかという話をしておく。

一般的なソフトウェア無線(SDR)の構成では、PC が IQ データを作って USB 越しにデバイスへ流す。だから制御側の PC が落ちたり通信が詰まったりすると即アウトになる。

T1060 はその PC の役割そのものを内部に持ち込んでいる。Raspberry Pi 5 が乗っているから、Python スクリプトがローカルで走る。FPGA はリアルタイム処理を担い、DAC がアナログに変換する。あとはアンテナをつなぐだけ、という構成だ。

つまり「波形を生成して出力するまでのパイプライン全体」を一台に閉じている。だから HAROGIC はこれを transmitter と呼ばず「waveform engine」と位置づけているわけだ。単なる出力デバイスではなく、波形を考えて出力する主体として扱いたいのだろう。


使い道を考えると、ドローンや移動ロボットへの搭載が真っ先に浮かぶ。ホスト PC が不要で自律動作できるから、コードレスで波形を出しながら走れる。RF の自動試験環境を作りたい人にも向いている。固定の試験台に置いてスクリプトだけで動かせるなら、セットアップが格段に楽になるはずだ。

エッジに置いて信号をリアルタイムで生成したい、あるいはラップトップを持ち込めない現場で RF の実験をしたい、そういう用途に刺さる設計だと思う。


気になる点もある。

Raspberry Pi 5 はシングルボードコンピュータとしては十分速いが、本格的な信号処理を同時にやらせると負荷は無視できない。FPGA が補っているとはいえ、どこまで複雑な波形生成をリアルタイムで回せるかは実際に触ってみないとわからないかな。放熱設計も 281 g のコンパクト筐体でどこまで余裕があるのか、気になるところだ。

価格はまだ公開情報に見当たらない。こういう機材はたいてい「お問い合わせください」の世界なので、手軽に触れるかどうかは未知数だろう。

とはいえ、「外に持ち出せる波形エンジン」というコンセプト自体は面白いと思う。形が変わると考え方も変わるかもしれないな。

— ランキン

出典

一次情報(公式・メーカー系)

第三者報道

記事中の仕様値(フェーズノイズ・帯域幅・サンプリングレートなど)はメーカー報告値であり、独立した第三者検証は現時点で未確認。

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