連続状態のpビットコンピュータをFPGAで動かしてみたら

確率的コンピュータ(pコンピュータ)の「連続状態版」を初めてFPGAで実証した論文が出た。7ビット素因数分解でソフトウェアQUBO比3万3千倍という数字とともに。


連続状態の確率的コンピュータをFPGAで動かしたという論文が出た。arXiv:2610.31339、10月22日付けのプレプリントだ。

まず「確率的コンピュータ(p-コンピュータ)」という概念から整理しておく。Purdue大学のSupriyo Dattaらが提唱したもので、古典ビットと量子ビットのあいだに位置するような計算単位——「pビット(probabilistic bit)」——を使う計算パラダイムだ。量子ビットのような重ね合わせや干渉はない。単純に確率的に0か1を取る素子を使う。

それだけ聞くとランダムノイズと何が違うの?という話になるが、肝はその確率分布がエネルギー関数によって定義されていて、隣接するpビットの状態に依存するという点だ。pビット同士の相互作用をうまく設計すると、QUBO形式に帰着できる組み合わせ最適化問題を確率的サンプリングで解くことができる。解空間をランダムに歩き回らせながら、低エネルギー状態——解に近い状態——に長く滞在させる構造を作るわけだ。ボルツマン機械やシミュレーテッドアニーリングに近い発想だと思う。

従来のpビットは離散値——0か1——を取っていた。今回の論文が提案する「連続pビット(continuous p-bit)」は、連続値の範囲でサンプリングする。エネルギー関数が局所的なエネルギーを決め、そこから条件付き分布を定義して有界な連続状態をサンプリングする構造だ。FPGA上では有限精度のデジタル演算と擬似乱数でこれを実現している。

報告されている結果で印象的なのは、7ビット素因数分解のベンチマークだ。FPGAで動かした連続状態pコンピュータは、ソフトウェアのQUBO実装と比べて平均解法時間を約3万3千倍短縮したとある。ただし比較対象がソフトウェアQUBOというのは注意が必要で、最先端の整数分解器との比較ではない。また、事前学習なしでMNIST画像パターンを回復できたとも報告されていて、連想記憶的な応用もありそうだ。

量子コンピュータほど注目を集えていない分野かもしれないが、pコンピュータのアプローチは組み合わせ最適化に対して現実的な優位性を出せる可能性がある。連続状態版というのは、エネルギー関数の設計次第でより豊かなサンプリング分布が使えるという利点がある。FPGAで動く、というのはスケールアップの余地もあるということだから、今後どういう問題サイズに適用できるかは見ておきたいと思う。

— ランキン

出典

論文(プレプリント)

  • Chao Fang, Hsuan Yao Tu, Yihan He, Xiao Gong, Chin-Fu Nien, Gengchiau Liang, “First hardware demonstration of a continuous-state probabilistic computer with programmable energy-defined sampling,” arXiv:2610.31339 (2026-10-22 提出) — 著者・大学の報告値で、査読前のプレプリントである。独立検証はこれから。

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